中国茶筆記

中国茶と旬

 寒くなると味わいの深い茶が欲しくなりますね。

 白茶・緑茶・青茶・紅茶・黄茶・黒茶・花茶と、中国茶には、製法の違いで大 きく分けて7つの種類がありますが、私の場合、気温が低いと、淡泊な白茶や緑 茶よりは、香りと味がはっきりして濃い青茶や紅茶を入れた茶缶に、つい手が伸 びてしまいます。
 寒い朝に、青茶や紅茶を中国式の茶漉(こ)し付きマグカップで手軽に淹(い)れて飲むと 、心身が本当に温まる感じがします。(祁門紅茶―キーマン紅茶―などは、 ほんのりとした甘みがあって、砂糖も要らないほどです。)
 こういう場合に、“ほっこりする”というのでしょうか。私は京都の生まれで はないので自信がないのですが。

 中国でも、上等の緑茶については、日本と同じくやはり春の一番茶が尊ばれま す。微妙で繊細な風味がみるみる褪せるので、なるべく早いうちに飲まれます。 だから、いい緑茶についていえば、「春」という旬があります。
 しかし、青茶は年に3回4回と茶摘みをしますし、黒茶のプーアル茶になると 元来保存用で、年数を置けば置くほど良くなるという茶です。
 概して、中国人は「この季節にはこの茶」ということはあまり言わないよう です。中国はこれも日本と同じく基本的に緑茶が飲まれるのですが、日常では緑 茶でも、です。

 あちらでは、インスタントコーヒーの空瓶に茶の葉を入れ、湯をつめふたをしめ て、水筒よろしく持ち歩き、いつでもどこでもふたをゆるめて飲む情景をよく見か けます。風味など、のどを通ればそれでよい、という風に見えるのですが、その姿 がごくさりげない。
 茶と人間との関わりが、日本人よりもある意味、はるかに自然なように思えま す。中国人にとって茶を飲むとは、いわば呼吸するようなものなのかもしれない というのが私の個人的な印象です。

 そもそも中国人にとってお茶とは何でしょうか。
 私はこう思っています。第一に、水がわりではないだろうか、と。
 中国の水は硬水で、いったん沸かさなければ飲めません。しかも沸かすと独特 の臭いがします。この臭みを消すことではないでしょうか、中国における日常の 茶が持つ第一の用途は。
 水に旬も季節もないでしょう。
 ・・・・・・と、以前、中国のホテルで、歯磨きのあと水道水で口をゆすいだ だけでたいそう腹を下したことのある私は思うのですが。

(2002/12)

 

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