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劉宗正 「民主主義の真の意味」
原題:「民主真意」

                                     『大紀元』インターネット 「自由広場」 2005年2月27日掲載
                                               
 (邦訳2005年3月20日)

  ある日、一人の善意に溢れる教師が農村へ出かけて討論会を開いた。討論会は、農民に民主主義とはどういうものかを少しでも理解してもらうのが目的だった。  

  ある老人が、「民主主義なんてただの言葉だ。力のある奴の言うことが民主主義なのだ」と、言った。中国で民主主義が行われ始めた1911年生まれのその老人は、百年近い自らの体験からこう断定したのだった。  
  教師は、「あなたがおっしゃっているのは民主主義ではなくて専制ですね。それはつまり、中国にはこれまで民主主義は存在しなかったということです」 と、微笑して答えた。  
  ある中年の男性が、「いわゆる民主主義とは、一般大衆が選挙に参加でき、投票ができる政治のことである」と、自信満々に述べた。
  教師は、「あなたのおっしゃったのは、民主主義の具体的な現象にしか過ぎません。それは民主主義の本質ではなくて、民主主義の必然的な結果です」 と、丁寧に説明した。  
  一人の青年が立ち上がって、「民主主義とは一般大衆による政治のことであり、一般大衆が制度と法律に基づいて、政府の公職にある人員を管理統制することです。これが民主主義でしょう?」と、言った。
  彼は村で唯一の大卒である。彼の発言を聞いて、他の村人たちは、民主主義とはそういうものかと思った。  
  しかし教師は、「君が民主主義として述べた内容は民主主義の制度レベルのことでしかない。それは民主主義の核心ではないよ。民主主義の核心は、人間一人一人の尊厳と権利を尊重することだ」と、答えた。  
  教師はさらに続けた。  
  「個人の尊厳と権利の尊重の上に、人類は自由や平等や、民主主義や人権といった理念を生みだしたのだよ。そしてこれらの理念とさらには人類愛と正義の原則の上に立って、様々な民主的制度や政策が生みだされたのであって、憲法にもとづく政治、人権の保障、民主主義的な選挙制度の実施、複数政党制、言論の自由、三権分立、法治社会、軍隊の国家化などはみなそうだ」  
  最初の老人が、「あんたの話は何のことか解らん。わしらに解っているのは、民主主義は食えんということだ。わしらは飯を食いに家に帰る。ではな」と、しびれを切らした様子で席を立った。老人に続いて、他の村人も次々と帰っていった。会場には教師だけが残された。  

  教師は頭を振ってため息をついた。空の真上で灼熱の太陽が放つ日差しが耐え難かった。
  だが彼は努力し続けなければならない。さもなければ、いつまでたっても農民は民主主義の真の意味を理解できないではないか。                                                                                                                      
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