東瀛小評

新疆独立と台湾独立
ンターネットの『明報』(1998年6月8日)に、江沢民国家主席が中国訪問中のトルコ共和国副首相にたいして新疆独立と台湾独立問題に干渉するなと強い調子で警告したという同紙独自の記事が報道されていた。
 この『明報』は香港の報道機関による同名の日刊紙のインターネット版である。
 トルコ共和国と新疆独立運動の関係はわかりやすい。しかし、台湾独立との関係についてはちょっとすぐにピンとこない。
 いうまでもなく新疆とは新疆ウイグル自治区のことであり、この地方の元来の住民であるウイグル人が漢民族の中華人民共和国による支配を喜んでいないことはよく知られている。そしてウイグル人はトルコ系民族であり、中国国内での弾圧を逃れて国外に脱出したウイグル独立派の人々は、同じトルコ系民族であるトルコ共和国に東トルキスタン独立をめざす組織の本部を置いている。「新疆」とは漢民族の言葉であり、ウイグル人にとっては東トルキスタンである。
 中国は、トルコ共和国が自国内における新疆(=東トルキスタン)独立運動組織の活動を規制するよう望んでいる。しかし、トルコ共和国は民主主義体制の法治国家であるという理由で、この運動に対してなんらの措置も取っていない。というより黙認しているといったほうがいいのかもしれない。少なくとも中国側はそう見ている。今回の江沢民国家主席の警告はそういう背景でなされたものである。
 では台湾独立運動とトルコ共和国とはなんのかかわりがあるのか。
 記事には書かれていないが、新疆独立派と台湾独立派(台湾の中華民国政府自体がそうかもしれないが)とは連係しあっているらしいのである。もともと、中国への反抗とそれから分離独立するという目的を共有しているのだから、中国内地の少数民族独立運動および台湾独立運動のあいだに交流・協力関係があっても不思議ではない。たとえば、台湾独立派とチベット独立(自治)派はたがいにエールを送り合っているし、最近、台湾にダライラマ事務所が設立されたが、これは表向き仏教を広めるという名目を掲げていても、やはりこの文脈で理解すべき出来事だろう。ダライラマの台湾訪問もふくめてである。
 実は、同日の『明報』に、東トルキスタン独立組織のある指導的な人物(匿名)が驚くべき発言を行っていることが報じられている。中国が武力で台湾を攻撃すれば、20万人から40万人のウイグル人が反乱軍として新疆で蜂起するというのである。20万から40万という数はもちろん誇張であろうが、こんなことは不用意に口に出す内容ではない。なまなかな弾圧ではつぶれないという自信があるからこそ公表したはずである。少なくとも、新疆独立派と台湾独立派の両者間に連絡やなんらかの共同作業がかなり以前からおこなわれていている事実を暗示するものであろう。

(1998/6/12)
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